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Gt.Vo椎木知仁 (シイキトモミ)

Ba.cho山本 大樹(バヤリース)

Dr.山田 淳(やまじゅん)


≪僕ら最高速でいつだって走れるわけじゃないんだって いつかは止まってしまう日が来る≫ (“アフターアワー”)
新潟県上越市出身の3ピースロックバンド、My Hair is Bad。バンド史上初となる待望のフルアルバムは、まさかのこんな歌詞から始まる。歌い出した瞬間から最後を見据えている感じはまるで、念願叶ってやっと付き合えた相手から「ま、いつかは別れるんだけどね」と言われたよう。そんな出だしに面食らった気もするが、納得してしまう自分もいる。バンドにも恋愛にも「いつまでも」なんてきっとないと知っていて、その前提の上をもがきながら最善を模索している。My Hair is Badの音楽は、そういった身近なリアルをまざまざと歌っているのだ。満を持してリリースされた今作『narimi』は、そんな彼らの【最善】をこれでもかと詰め込んだ作品となった。

椎木知仁(Gt/Vo)自身の私生活上で起こった感情の機微を大胆に曝け出す歌詞は健在。アウトかセーフかと言われたら恐らくギリギリアウトなのだが、その度胸が清々しい。さらに今作では、バヤリース(Ba/Cho) とやまじゅん(Dr)が幹となるメロディーラインが更に厚みを増し、リズムパターンも豊富になっている。この音にならどんな浮ついた歌詞でも安心して乗せられるといった3人の信頼関係が、シンプルで真っ直ぐなサウンドから垣間見られるようだ。聴く人を踊らせようとか楽しませようとか、変なエゴや細工は一切ない。そんな直向きな音を鳴らす彼らが出した【最善】とは、【自分のための音楽を鳴らすこと】だった。結局のところ自分が一番可愛いし、自分の為に生きながら、自分のことを歌っている。そんな彼らの音楽の前で、聴き手が心まで着飾る必要なんてない。包み隠さずに向き合ってくれるから、着膨れした心のファスナーを全開にできる。タンスの奥に眠る懐かしい匂いが染みついた服のように、ファスナーの奥から出てきた本音が人間臭くたっていい。そう思わせてくれるのが、My Hair is Badの音楽だ。自己満足が人を救う、嘘のような本当の名盤。